がん末期でもリハビリは必要?在宅で行う緩和的リハビリの目的と内容
更新日:8月26日

「がんが進行しているのに、今からリハビリをして意味があるのでしょうか」
「体力が落ちているのに、無理に身体を動かして大丈夫ですか」
「もう歩けなくなっているので、リハビリを受けても仕方がないのではないですか」
がん末期・終末期の方やご家族から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、がん末期や終末期にもリハビリを行う意味はあります。
ただし、筋力をつけることや、長い距離を歩けるようになることだけが目的ではありません。
痛みや息苦しさを少しでも軽減すること。
ベッドから起きて、家族と同じ場所で過ごすこと。
できる範囲でトイレへ行くこと。
本人が大切にしている動作や役割を続けること。
ご家族が無理なく介助できる方法を整えること。
がん末期に行う緩和的リハビリは、限られた時間の中でも、その人らしい生活を守るためのリハビリです。
がん末期に行う「緩和的リハビリ」とは
がんのリハビリテーションは、目的に応じて、予防的・回復的・維持的・緩和的という段階に分けて考えられます。
がん末期・終末期に行う緩和的リハビリでは、身体機能の回復だけを目標にするのではなく、病状や症状に合わせながら、苦痛の軽減、生活動作の維持、生活の質の向上を目指します。がん診療ガイドラインでも、がん患者のADLやQOLの低下を予防・改善するためのリハビリテーションの重要性が示されています。
一般的なリハビリとの目的の違い
一般的なリハビリ | がん末期の緩和的リハビリ |
筋力や体力を向上させる | 苦痛や身体への負担を軽減する |
歩ける距離を伸ばす | 必要な場所まで安全に移動する |
動作能力の改善を目指す | 今できている動作をできるだけ続ける |
練習量を段階的に増やす | その日の体調に合わせて内容を変える |
退院や社会復帰を目指す | 自宅でその人らしく過ごすことを支える |
状態が悪化しているからリハビリを行わない、ということではありません。
その時点の身体状態や希望に合わせて、リハビリの目的と内容を変えることが大切です。
在宅で行う緩和的リハビリの具体的な内容
がん末期の在宅リハビリでは、決められた運動を繰り返すのではなく、実際の自宅環境と本人の希望を確認しながら支援します。
痛みや息苦しさの少ない姿勢を整える
がんの進行に伴い、痛み、息苦しさ、倦怠感、浮腫などが強くなることがあります。
ベッドの角度、枕やクッションの位置、身体の向きなどを調整し、少しでも楽に過ごせる姿勢を探します。
同じ姿勢が長く続くことで生じる関節の痛みや皮膚への負担にも配慮します。
ベッドから起きる、座る動作を支える
歩くことが難しくなっていても、ベッドから起きて座ることで、家族と話す、食事をする、外を見るなど、生活の幅が広がることがあります。
ただし、無理に起こすことが目的ではありません。
血圧、呼吸状態、痛み、疲労などを確認しながら、身体への負担が少ない起き上がり方や座り方を考えます。
トイレや車椅子への移動を支える
「できる限りトイレへ行きたい」
「ずっとベッドの上ではなく、時々は車椅子に座りたい」
このような希望を持つ方もおられます。
ベッドからポータブルトイレや車椅子への移乗方法を確認し、本人の力を生かしながら、安全で負担の少ない方法を検討します。
歩ける距離を伸ばすことよりも、本人が大切にしている場所へ移動できることを優先する場合もあります。
関節が硬くなることや動作時の痛みを予防する
ベッドで過ごす時間が増えると、関節が動かしにくくなり、着替え、排泄、清拭などの際に痛みが出ることがあります。
体調に配慮しながらゆっくり身体を動かし、関節の動きや筋肉の緊張を整えます。
これは運動能力を高めるためだけではなく、日常のケアを少しでも苦痛なく受けられるようにするための支援です。
本人が大切にしている活動を支える
作業療法士は、食事、整容、着替え、趣味、家族との時間など、その人にとって意味のある生活行為を支援します。
例えば、
自分で好きな飲み物を口にする
家族と同じ食卓で過ごす
好きな音楽を聴く
写真や思い出の品を見る
ベランダや玄関先で外の空気を感じる
家族へ自分の思いを伝える
といったことも、リハビリの大切な目標になります。
国立がん研究センターでも、終末期に向かう方が何らかの形で作業に参加し、その人らしい生活を送れるよう作業療法士が関わることが紹介されています。
体調が悪い日は、運動をしないこともあります
リハビリというと、毎回立ったり歩いたりするイメージがあるかもしれません。
しかし、がん末期・終末期では、日によって体調が大きく変化します。
痛みや息苦しさ、倦怠感が強い日に、無理に運動を行う必要はありません。
そのような日は、
楽な姿勢を整える
関節をゆっくり動かす
ベッドや車椅子を調整する
福祉用具を見直す
ご家族へ介助方法を説明する
本人の話を聞き、希望を確認する
といった支援へ変更します。
リハビリを行うこと自体が目的ではなく、その日の本人にとって必要な支援を行うことが目的です。
ご家族への介助支援もリハビリの一部です
がん末期の在宅療養では、ご本人だけでなく、支えるご家族にも大きな負担がかかります。
「どこまで身体を動かしていいのか分からない」
「ベッドから起こす時に痛がる」
「転倒させてしまいそうで怖い」
「介助するたびに腰や肩が痛くなる」
「本人が動きたがらない時、どう声をかければよいか分からない」
このような不安に対して、理学療法士や作業療法士が、身体への負担が少ない介助方法や福祉用具の使い方をお伝えします。
本人の残っている力を生かすことで、ご家族の身体的負担を軽くできる場合もあります。
終末期のリハビリでは、本人の身体機能だけでなく、家族関係や生活状況を把握し、本人と家族の両方を支える視点が重要です。日本作業療法士協会も、身体と心の苦痛に向き合い、生活の質を保つことを終末期リハビリの重要な役割として紹介しています。
ROKUが行う、がん末期・終末期の訪問リハビリ
ROKU訪問看護ステーションでは、大阪市浪速区・大国町を中心に、がん末期・終末期の方への訪問看護と、理学療法士・作業療法士によるリハビリを行っています。
ROKUが大切にしているのは、単に運動を行うことではありません。
看護とリハビリの両方から、その人が自宅でどう過ごしたいかを考えることです。
看護師とPT・OTが同じチームで情報を共有します
がん末期の方は、痛み、呼吸状態、血圧、食事量、眠気、倦怠感などが日々変化します。
ROKUでは、看護師と理学療法士・作業療法士が同じ訪問看護ステーションに在籍し、日々の状態を共有します。
看護師は、
痛みや息苦しさ
血圧、脈拍、呼吸状態
医療用麻薬を含む服薬状況
食事や水分摂取
排泄や睡眠
点滴、在宅酸素、カテーテルなどの医療処置
ご家族の不安や介護負担
などを確認します。
理学療法士・作業療法士は、
寝返り、起き上がり、座位、移乗などの動作
痛みや疲労が少ない身体の動かし方
トイレ、食事、着替えなどの生活動作
ベッド、車椅子、手すりなどの福祉用具
自宅内の生活動線
本人が大切にしている活動や役割
ご家族の介助方法
などを確認します。
看護だけでは見えにくい生活動作と、リハビリだけでは判断しにくい医療面を共有することで、状態が変化しやすい方にも、その日の状態に合わせた支援を検討します。
医療処置がある方もご相談いただけます
がん末期の方では、在宅酸素、点滴、中心静脈栄養、尿道カテーテル、ストーマ、褥瘡処置、医療用麻薬による疼痛管理などが必要な場合があります。
医療処置があるという理由だけで、最初からリハビリを諦める必要はありません。
主治医の指示や病状を確認したうえで、看護師と連携しながら、無理のない支援を検討します。
運動を行うことが難しい日でも、姿勢調整、関節のケア、福祉用具の調整、ご家族への介助指導など、できる支援があります。
「できること」を一方的に決めません
本人が希望していないのに、歩く練習や運動を無理に行うことはありません。
「家族と一緒に食卓で過ごしたい」
「自分でトイレに行きたい」
「少しでも外の空気を吸いたい」
「できるだけ家族に負担をかけたくない」
一人ひとり大切にしていることは違います。
ROKUでは、本人とご家族の思いを確認しながら、今の状態で何ができるかを一緒に考えます。
24時間365日の看護体制で在宅療養を支えます
がん末期の在宅療養では、夜間や休日に痛みや息苦しさが強くなることもあります。
リハビリスタッフが24時間訪問するという意味ではありませんが、ROKUでは訪問看護による24時間365日の連絡体制を整えています。
普段の状態を知る看護師が、ご本人やご家族からの相談を受け、必要に応じて主治医や訪問診療と連携します。
リハビリの時間だけでなく、日々の療養生活を看護師とリハビリ専門職が同じ方向を向いて支えることが、ROKUの特徴です。
退院前から病院やケアマネジャーと連携します
がん末期の方が自宅へ退院する場合、退院してから支援を考えるのではなく、退院前から準備することが大切です。
ROKUでは、退院前カンファレンスへの参加や、病院、主治医、訪問診療、ケアマネジャー、福祉用具事業所などとの情報共有にも対応しています。
自宅でどこまで動くことができるか
ベッドや車椅子は必要か
トイレまで移動できるか
どのような医療処置が必要か
ご家族が介助できる範囲
夜間や休日の相談体制
看護師とリハビリの訪問頻度
などを確認し、自宅での生活を具体的に整えます。
がん末期のリハビリは、いつから相談できますか?
歩けなくなってからではなく、
最近、寝て過ごす時間が増えた
立ち上がりやトイレ移動が難しくなった
息切れや疲れやすさが強くなった
関節が硬くなってきた
ご家族の介助負担が増えている
退院後の生活に不安がある
本人が続けたい動作や活動がある
という段階から相談できます。
病状が進んでから慌てて環境を変えるよりも、早めに相談することで、本人の希望に合った支援を準備しやすくなります。
よくあるご質問
寝たきりでもリハビリを受けられますか?
ご相談いただけます。
歩行練習だけがリハビリではありません。痛みの少ない姿勢の調整、関節が硬くなることの予防、ベッド上での動作、褥瘡予防につながる体位の検討、ご家族への介助指導などを行います。
在宅酸素や点滴をしていてもリハビリはできますか?
病状、医療処置、主治医の指示を確認したうえで対応を検討します。
看護師と情報を共有し、呼吸状態、血圧、脈拍、疲労、痛みなどに配慮しながら支援します。
体調が悪い日も運動をしなければいけませんか?
無理に運動することはありません。
体調が悪い日は、姿勢調整、関節のケア、福祉用具の確認、ご家族への介助指導など、その日に必要な内容へ変更します。
看護師の訪問とリハビリを一緒に利用できますか?
医療面と生活面の両方から支援が必要な場合は、看護師とリハビリ専門職が役割を分担し、情報を共有しながら対応します。
訪問回数や組み合わせは、病状、主治医の指示、利用する保険制度などを確認してご提案します。
がん末期でも、その人らしい生活を支える方法はあります
がん末期のリハビリは、病気を治すためだけのものでも、無理に身体を動かすためのものでもありません。
少しでも楽な姿勢で過ごすこと。
自分でできる動作を続けること。
家族と同じ場所で過ごすこと。
本人が大切にしている時間や役割を守ること。
ご家族が安心して介助できるようにすること。
その一つひとつが、在宅で行う緩和的リハビリの大切な目的です。
ROKU訪問看護ステーションでは、看護師と理学療法士・作業療法士が連携し、医療面と生活面の両方から支援します。
内部リンク:「浪速区の訪問看護・リハビリについて詳しく見る」
自宅で過ごしたい想いを、あきらめない。
がん末期・終末期の方の在宅療養や訪問リハビリについて、病院関係者様、ケアマネジャー様、ご本人・ご家族様からのご相談を受け付けています。
まだ退院日が決まっていない段階や、訪問看護を利用するか迷っている段階でもご相談ください。
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執筆者:宮本 真一郎
看護師。救急・急性期・手術室・離島医療を経験後、訪問看護に約8年間従事。癌末期・難病・医療依存度の高い方への訪問看護、在宅看取り、ご家族への支援に携わる。ROKU訪問看護ステーション代表。




