心不全で退院した後の訪問看護・リハビリ|自宅で暮らし続けるために

心不全で入院し、治療によって状態が落ち着いて自宅へ退院。
退院できたことに安心する一方で、
「また息苦しくなったらどうしよう」
「むくみが出たら病院へ行った方がいい?」
「どのくらい動いていいの?」
「家では何を見ておけばいい?」
と不安を感じる方やご家族は少なくありません。
心不全は、退院したら終わりという病気ではありません。
自宅で生活している中で、少しずつ身体に水分がたまり、息切れやむくみ、体重増加、食欲低下、疲れやすさなどが現れ、再び状態が悪化することがあります。
心不全では、肺や身体に水分がたまることで労作時の息切れ、夜間の呼吸困難、下肢のむくみなどがみられ、心拍出量が低下すると倦怠感や尿量低下、食欲低下などが生じることがあります。
だからこそ大切なのは、悪くなってから病院へ行くことだけではなく、自宅での小さな変化を早い段階で見つけることです。
ROKU訪問看護ステーションでは、看護師による病状管理だけでなく、理学療法士・作業療法士によるリハビリも組み合わせながら、心不全の方の在宅生活を支えます。
私たちが考えるゴールは、単に「再入院しないこと」だけではありません。
自宅で過ごしたい。自分でトイレへ行きたい。家族と食卓を囲みたい。近所まで歩きたい。できることを、できるだけ続けたい。
その想いを簡単にあきらめず、医療と生活の両面から支えることを大切にしています。
心不全では「いつもの状態」を知ることが大切です
心不全の訪問看護では、訪問した日の血圧やSpO2だけを見て終わるわけではありません。
重要なのは、
「この方の普段と比べてどうか」
という視点です。
いつもより息切れしていないか。
少し歩いただけで休憩する回数が増えていないか。
足のむくみが強くなっていないか。
横になると息苦しくないか。
夜中に息苦しくて起きていないか。
食欲が落ちていないか。
尿の量が減っていないか。
体重が増えていないか。
今までできていた家事や入浴、トイレへの移動がしんどくなっていないか。
こうした生活の変化そのものが、心不全悪化のサインになることがあります。
心不全では体液貯留に伴って体重が増加することがあり、日本循環器学会の患者向け解説でも、体重増加に息切れやむくみの悪化が加わっていく過程が注意すべきサインとして示されています。一般社団法人 日本循環器学会
ROKUでは、測定した数字だけでなく、その人の生活が昨日までと変わっていないかを見ます。
訪問看護では心不全の何を見ているのか
看護師は、血圧、脈拍、SpO2、呼吸状態などを確認しながら、体重、浮腫、尿量、食事・水分摂取、睡眠、活動量、服薬状況などを合わせて評価します。
たとえば、血圧が普段と変わらなくても、
「最近、夜に横になると苦しい」
「ここ数日で靴がきつくなった」
「食事量が落ちている」
「トイレへ行くだけで息切れするようになった」
という変化があれば、心不全が悪化し始めている可能性を考えます。
必要に応じて主治医や訪問診療医へ状態を報告し、受診や治療調整につなげます。
大きく悪くなってから医療につなぐのではなく、小さな変化の段階で気づき、次の対応につなげる。
これが在宅で訪問看護が関わる大きな意味の一つです。
心不全を含め、退院後の状態変化が不安な方については、退院前の段階からご相談いただけます。
心不全では「動かない方がいい」とは限りません
「心臓が悪いから、できるだけ安静にした方がいい」
そう考える方もいます。
しかし、状態が安定している心不全の方では、その人に合った運動療法や心臓リハビリテーションが重要です。
2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでは、回復期の運動療法は運動耐容能やQOLの改善を目的として推奨され、多職種による包括的な心臓リハビリテーションは心不全による再入院予防の観点からも推奨されています。
また、高齢心不全では身体機能やADL、生活そのものを維持する視点が重視され、在宅でのリハビリについても取り上げられています。
ただし、これは「どんどん運動すればいい」という意味ではありません。
心不全の状態、血圧、脈拍、息切れ、浮腫、疲労感、服薬内容などを確認しながら、その日の身体状態に合わせて活動量を考えることが重要です。
訪問リハビリだからこそ「生活そのもの」を見られる
病院のリハビリ室で歩けていても、自宅へ帰ると状況はまったく違います。
ベッドからトイレまでの距離。
玄関の段差。
浴室。
廊下の幅。
買い物に行くまでの距離。
階段。
一人暮らしか、家族と暮らしているのか。
心不全の方にとって重要なのは、単に「何メートル歩けるか」ではありません。
その体力で、その人が実際の自宅生活を送れるかです。
ROKUの理学療法士・作業療法士は、ご自宅で実際の生活動作を確認します。
たとえば、トイレまで歩いた時に息切れがどの程度出るのか。
入浴や着替えでどのくらい疲れるのか。休憩をどこに入れれば安全に生活できるのか。
杖や歩行器が必要なのか。家族がどのように介助すれば負担が少ないのか。
こうした部分まで確認しながらリハビリを行います。
心不全では「看護」と「リハビリ」を分けて考えない
心不全の在宅療養でROKUが特に大切にしたいのが、看護師と療法士が同じ利用者様を見ながら情報を共有することです。
理学療法士が訪問した際に、
「いつもより歩行時の息切れが強い」
「今日は途中で何度も休憩が必要だった」
「足のむくみが強くなっている」
と気づくことがあります。
反対に、看護師が、
「体重が増えてきている」
「利尿薬が変更された」
「血圧がいつもより低い」
「主治医から活動量について新しい指示が出た」
という情報を持っていることもあります。
その情報を看護とリハビリで共有することで、
今日は運動量を落とした方がいいのか。いつも通り動いていいのか。主治医へ報告した方がいいのか。
をチームで考えることができます。
2025年の心不全診療ガイドラインでも、多職種による心不全管理は入院や死亡の低下、QOL向上に有用とされる一方、画一的な介入ではなく、その人のニーズに応じた個別化したケアが重要とされています。
ROKUが心不全の方を見るときも、そこを大切にしています。
心不全のリハビリは「頑張らせること」ではありません
心不全の方へのリハビリでは、筋力をつけることだけが目的ではありません。
むしろ、
疲れすぎない動き方を知る。休憩を上手に入れる。今できることを維持する。生活の中で必要な動作を安全に続ける。
という考え方が重要です。
たとえば、「毎日入浴したい」という方なら、入浴だけを見るのではなく、脱衣、浴室までの移動、身体を洗う、浴槽への出入り、着衣までを含めて負担を考えます。
一連の動作で息切れが強ければ、椅子を置く、動作を分ける、休憩を入れる、家族に一部を手伝ってもらうなど、その人に合った方法を考えます。
できないからやめるのではなく、どうすれば続けられるかを考える。
これは、ROKUが大切にしている「自宅で過ごしたい想いを、あきらめない」という考え方にもつながっています。
塩分や水分は「全員同じ」ではありません
心不全では塩分や水分について説明を受けることがあります。
ただし、特に水分については「心不全だから全員○mLまで」と一律に決めるものではありません。
2025年改訂版心不全診療ガイドラインでも、一律の厳格な水分制限ではなく、重症度や低ナトリウム血症など患者ごとの状態に応じた調整が必要とされています。
そのためROKUでも、病院や主治医から出ている指示を確認したうえで、ご本人が実際にどの程度飲んでいるのか、食事内容、体重、むくみ、尿量などを確認します。
「水分を減らせばいい」
「体重が増えたから自己判断で利尿薬を増やす」
といった対応はせず、変化がある場合は主治医と連携して対応します。
薬をきちんと飲めることも在宅療養では重要です
心不全では複数の薬が処方されることがあります。
しかし自宅へ帰ると、
「朝の薬をよく忘れる」
「血圧が低いから自分で薬を止めている」
「利尿薬を飲むとトイレが近くなるから外出日は飲まない」
ということも起こります。
訪問看護では、単に「薬を飲みましたか」と確認するだけでなく、なぜ飲めないのか、生活のどこに問題があるのかまで考えます。
必要に応じて主治医や薬剤師、ケアマネジャーとも情報を共有し、自宅で続けられる服薬方法を考えます。
こんな変化があれば早めに相談してください
心不全の悪化は、最初から激しい呼吸困難として現れるとは限りません。
特に次のような変化がある場合は、主治医や訪問看護師へ早めに相談することが大切です。
普段より明らかに息切れが強い、横になると苦しい、夜間に息苦しくて目が覚める、むくみや体重増加が目立つ、尿量が減った、食事がとれない、強い倦怠感がある、胸痛・失神・意識状態の変化がある、いつもできていた室内移動だけでも息苦しくなった場合。
特に安静にしていても呼吸が苦しい、横になることができないなどの症状は、速やかな医療機関への相談・受診が必要になることがあります。
夜間や休日の状態変化に備えることも、自宅で心不全と付き合っていくうえでは大切です。
「再入院しないため」だけに生活するわけではありません
心不全になると、
塩分を控える。
水分を気にする。
体重を測る。
薬を飲む。
無理をしない。
たくさんのことを言われます。
もちろん、病気を管理することは大切です。
でも、そのことだけで毎日の生活がいっぱいになってしまうと、「何のために自宅へ帰ったのか」が分からなくなることがあります。
私たちが在宅で知りたいのは、
「この人は、家でどう過ごしたいのか」ということです。
自分でトイレへ行きたい。
家族と一緒に食事をしたい。
近所まで散歩したい。
犬と一緒に過ごしたい。
お風呂には自分で入りたい。
できるだけ家族に迷惑をかけずに暮らしたい。
目標は人によって違います。
その希望を聞いたうえで、看護師は病状を管理し、療法士は身体機能と生活動作を支える。
病気に生活を合わせるだけではなく、できるだけその人の生活を守りながら病気と付き合っていく。
それが、在宅で心不全の方を支える訪問看護・リハビリの役割だとROKUは考えています。
病院・地域連携室・MSWの方へ|心不全で退院される方もご相談ください
心不全で入退院を繰り返している方。
独居や老老介護で自己管理に不安がある方。
服薬管理が難しい方。
退院後の活動量に不安がある方。
訪問看護とリハビリを同時に導入したい方。
訪問診療先やケアマネジャーがまだ決まっていない方。
そのような段階からでもROKUへご相談ください。
ROKUでは病院の地域連携室・MSW・退院支援担当者、主治医、訪問診療医、ケアマネジャーなどと連携しながら、退院後の生活を見据えた支援体制を一緒に考えます。
訪問診療先やケアマネジャーが未定の場合についても、在宅療養の体制づくりからご相談ください。
介護サービスの調整が必要な場合には、ROKUケアプランセンターとの連携も可能です。
心不全になっても、自宅での生活をあきらめないために
心不全は、長く付き合っていくことの多い病気です。
状態が良い時もあれば、悪くなる時もあります。
だからこそ、自宅では「異常がないかを監視する」だけではなく、その人がその人らしく暮らし続けられているかを見ることが大切です。
看護師が病状の小さな変化を捉える。
理学療法士・作業療法士が身体機能と実際の生活動作を見る。
主治医やケアマネジャーと情報を共有する。
そして、ご本人とご家族が何を大切にしているのかを聞く。
ROKU訪問看護ステーションでは、
「自分の大切な家族なら、どうしてほしいか」
という視点を大切にしています。
心不全があるからといって、最初から自宅での生活や、やりたいことをあきらめる必要はありません。
何ができるのか。
どのような支援があれば続けられるのか。
看護とリハビリの両面から、一緒に考えていきます。
参考文献・参考資料
日本循環器学会・日本心不全学会合同ガイドライン「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」心不全の疾病管理、患者教育・セルフケア、栄養管理、運動療法、包括的心臓リハビリテーション、多職種連携などについて最新の推奨がまとめられています。今回の記事の中心となる根拠資料です。
日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」心不全を含む心血管疾患に対する運動療法、身体機能評価、包括的心臓リハビリテーションについてまとめられています。
厚生労働科学研究班・関連学会「地域のかかりつけ医と多職種のための心不全診療ガイドブック」病院内だけではなく、診療所・在宅療養を含めた心不全管理を、多職種連携や患者の生活・療養環境の視点からまとめた実践的資料です。
日本循環器学会「心不全療養指導士ガイドブック」心不全患者への療養指導、セルフケア支援、多職種での疾病管理などを体系的にまとめた公式ガイドブックです。
この記事を書いた人
宮本真一郎ROKU訪問看護ステーション/看護師
病院での救急・急性期看護、手術室、離島医療などを経験した後、訪問看護へ。
現在は大阪市浪速区・大国町を拠点に、医療依存度の高い方を含めた在宅療養を支えています。
「自宅で過ごしたい想いを、あきらめない。」「自分の大切な家族もROKUで看たいと思える看護」
を大切に、利用者さんとご家族が安心して自宅で過ごせる訪問看護を目指しています。






