在宅酸素をつけたまま退院|自宅で気を付けることと訪問看護の役割
- 宮本 真一郎
- 3 日前
- 読了時間: 10分

入院中に酸素吸入が必要となり、そのまま在宅酸素療法(HOT)を続けながら自宅へ退院することがあります。
退院が決まったご本人やご家族からは、
「酸素をつけたまま家で生活できるの?」「息苦しくなったら酸素を増やしていい?」「お風呂や外出はできる?」「夜中に酸素の機械がおかしくなったらどうする?」
といった不安の声も聞かれます。
在宅酸素療法を行いながらでも、ご自宅で療養生活を送ることは可能です。
ただし、酸素は医師から指示された流量を守って使用することが大切です。また、呼吸状態の変化や酸素機器の取り扱い、火気などにも注意する必要があります。
この記事では、在宅酸素を使用したまま退院される方とご家族に向けて、自宅で気を付けたいことや、訪問看護でできる支援について解説します。
在宅酸素療法(HOT)とは?
在宅酸素療法とは、病気などによって身体に必要な酸素を十分に取り込めない方が、自宅で酸素を吸入しながら生活する治療です。
英語の「Home Oxygen Therapy」の頭文字から「HOT(ホット)」とも呼ばれます。
自宅では主に酸素濃縮装置を使用し、鼻に装着するカニューラなどから酸素を吸入します。
外出時には携帯用酸素ボンベなどを使用することもあります。
在宅酸素療法が必要になる病気や状態はさまざまで、慢性呼吸器疾患だけでなく、心疾患やがんなどで使用される場合もあります。
酸素をつけたままでも自宅へ退院できる?
在宅酸素療法が必要だからといって、自宅で生活できないわけではありません。
退院前に、
自宅で使用する酸素機器
医師から指示された酸素流量
安静時・運動時・睡眠時の使用方法
外出時の酸素使用方法
機器トラブル時の連絡先
呼吸状態が悪化した場合の対応
などを確認しておくことで、自宅で療養を続けることができます。
特に退院直後は病院と自宅で生活環境が大きく変わるため、訪問看護などの在宅サービスを利用しながら生活を整えていくことも重要です。
自宅で気を付けたい6つのポイント
1.酸素流量を自己判断で変更しない
在宅酸素療法では、医師から酸素流量が指示されています。
たとえば、
「安静時○L/分」「歩行時○L/分」「睡眠時○L/分」
など、その方の状態によって指示内容は異なります。
息苦しいからといって自己判断で酸素流量を上げたり、調子が良いからといって酸素を止めたりするのは避けましょう。
酸素も治療の一つです。
基本的には医師から指示された方法で使用し、息苦しさが強くなった場合には訪問看護師や主治医へ相談します。
2.SpO2の数字だけで判断しない
在宅酸素療法を行っている方では、パルスオキシメーターを使用してSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を測定することがあります。
SpO2は呼吸状態を確認するうえで重要な情報の一つです。
しかし、数字だけを見て状態を判断するのではなく、
息苦しさが強くなっていないか
呼吸が速くなっていないか
会話がいつも通りできるか
顔色や唇の色に変化がないか
意識状態に変化がないか
食事や水分を取れているか
いつもと同じように動けているか
など、ご本人の状態を合わせて確認することが大切です。
「いつものSpO2と大きく違う」「酸素を使用していても息苦しさが強い」といった場合には、訪問看護師や主治医へ相談してください。
3.酸素チューブの折れや外れを確認する
「急にSpO2が下がった」
「いつもより息苦しい」
このような場合には、身体の状態だけでなく酸素機器も確認します。
鼻のカニューラが外れていないか、酸素チューブが折れ曲がっていないか、家具などの下敷きになっていないかなどを確認してください。
長いチューブを使用して室内を移動している方では、チューブが家具や足に引っ掛かり、転倒につながる可能性もあります。
生活動線を考えて酸素機器を設置することも大切です。
4.火気には十分注意する
在宅酸素療法で特に注意しなければならないのが火気です。
酸素そのものが燃えるわけではありませんが、酸素には物を燃えやすくする性質があります。
そのため、酸素機器を使用している周囲では、たばこ、ストーブ、ガスコンロ、ろうそく、線香などの火気に十分注意する必要があります。
酸素濃縮装置などの使用中は、装置の周囲2m以内に火気を置かないようにします。
特に酸素吸入中の喫煙は絶対に避けてください。
ご本人だけではなく、ご家族や訪問者も含めて火気の取り扱いについて理解しておくことが重要です。
5.鼻や耳の皮膚トラブルにも注意する
酸素カニューラを長時間使用していると、鼻の周囲や耳にチューブが当たり続けることで、
赤み
痛み
皮膚の傷
圧迫による皮膚トラブル
が起こることがあります。
毎日同じ場所にチューブが当たるため、小さな赤みでも放置すると悪化することがあります。
訪問看護では呼吸状態だけでなく、カニューラが当たっている皮膚の状態も確認します。
6.外出時は酸素の残量を確認する
携帯用酸素ボンベなどを使用して外出する場合には、出発前に使用可能時間を確認します。
「病院へ行くだけだから大丈夫」と思っていても、診察や検査、会計などで予定より帰宅が遅くなることがあります。
移動時間だけではなく、待ち時間なども考慮して余裕をもって準備しましょう。
外出方法や使用時間が分からない場合には、酸素機器の事業者や医療職へ確認してくださ
い。
息苦しくなったときはどうする?
在宅酸素を使用している方が息苦しさを訴えた場合には、まず落ち着いて状態を確認します。
カニューラが外れていないか、酸素チューブが折れていないか、酸素機器が正常に作動しているかなどを確認します。
同時に、
SpO2
呼吸数
意識状態
顔色
胸痛の有無
発熱の有無
痰の量や色
いつから苦しくなったのか
なども確認します。
酸素を使用していても強い呼吸困難が続く場合や、意識状態がおかしい、唇が紫色になる、強い胸痛があるなど明らかな異常がある場合には、緊急の対応が必要になることがあります。
SpO2が下がったら酸素を増やしていい?
ご家族から多い質問の一つです。
基本的には、自己判断で酸素流量を変更するのではなく、主治医から指示された流量で使用します。
大切なのは「SpO2が低い=とにかく酸素を増やす」と考えないことです。
SpO2が下がった原因が、
カニューラが外れている
チューブが折れている
痰が増えている
肺炎などを起こしている
病状そのものが悪化している
といった可能性もあります。
普段と違う状態が続く場合には、訪問看護師や主治医へ相談してください。
なお、主治医から「SpO2が○%以下の場合には○Lへ変更」など、あらかじめ具体的な指示を受けている場合には、その指示に従います。
在宅酸素を使用していてもお風呂に入れる?
状態が安定しており、主治医から制限されていなければ、在宅酸素療法を行いながら入浴できる方もいます。
ただし、入浴は身体への負担が大きく、着替えや移動を含めて酸素消費量が増えることがあります。
入浴中の酸素使用については、その方の病状や医師の指示によって異なります。
また、浴室や脱衣所でチューブが引っ掛かったり、濡れた床で転倒したりする危険もあります。
訪問看護では実際の自宅環境を確認しながら、安全な入浴方法を一緒に考えることができます。
在宅酸素を使用していても外出できる?
在宅酸素療法を行っているからといって、必ず自宅に閉じこもらなければならないわけではありません。
状態が安定していれば、携帯用酸素を使用しながら通院や散歩などの外出ができる方もいます。
「酸素が必要だから動かない」のではなく、その方の状態に合わせて活動量を考えることが大切です。
呼吸状態や体力が低下している場合には、看護師やリハビリ職と相談しながら、安全に活動できる範囲を考えていきます。
在宅酸素療法を行っている方に訪問看護でできること
訪問看護では、酸素機器だけを見るのではありません。
ご本人の状態に合わせて、
SpO2・呼吸数などの確認
呼吸音や呼吸状態の観察
息苦しさの程度の確認
痰の量・色・性状の確認
酸素流量や使用状況の確認
カニューラや酸素チューブの確認
鼻や耳などの皮膚状態の確認
食事・水分摂取状況の確認
日常生活動作の確認
ご本人・ご家族への酸素管理の説明
主治医との情報共有
などを行います。
必要に応じて理学療法士・作業療法士などとも連携し、呼吸状態を確認しながら自宅での活動やリハビリを支援することもできます。
退院直後は「病院では大丈夫だった」が変わることもあります
病院ではベッドからトイレまでの距離が短く、困ったときにはすぐに看護師へ相談できます。
しかし、自宅へ戻ると、
「寝室からトイレまで歩くと息切れする」
「玄関に段差があって外出が大変」
「お風呂に入るとかなり息苦しい」
「酸素チューブが家具に引っ掛かる」
など、入院中には分からなかった問題が見つかることがあります。
訪問看護のメリットの一つは、実際に生活している自宅を見ながら支援できることです。
退院後の生活で見つかった問題を、ご本人・ご家族、主治医、ケアマネジャー、リハビリ職などと共有しながら調整していきます。
夜間に息苦しくなったときの連絡先も確認しておく
呼吸状態の悪化は日中だけに起こるとは限りません。
「夜中に急に息苦しくなった」
「酸素をしているのにSpO2がいつもより低い」
「酸素機器の警報が鳴っている」
といったことも考えられます。
退院前には、夜間や休日に状態が変化した場合に、
訪問看護へ連絡するのか、主治医へ連絡するのか、どのような状態なら救急要請するのか
を確認しておくことが大切です。
また、酸素機器そのものの故障や警報については、機器を管理している事業者の緊急連絡先も確認しておきましょう。
「酸素が必要だから自宅は難しい」とは限りません
在宅酸素療法を始めると聞くと、
「ずっと酸素につながれた生活になるのでは」
「家族だけで対応できるだろうか」
と不安になる方もいらっしゃいます。
しかし、在宅酸素が必要だからといって、自宅での生活を諦めなければならないわけではありません。
重要なのは、
その方に必要な酸素量を守りながら、病状の変化を早期に発見し、安全に生活できる環境を整えること
です。
訪問看護では、ご本人の呼吸状態だけではなく、「自宅でどのように過ごしたいのか」という生活そのものを考えながら支援していきます。
大阪市浪速区周辺で在宅酸素をつけたまま退院される方へ
ROKU訪問看護ステーションでは、在宅酸素療法をはじめ、退院後も医療的な管理が必要な方の在宅療養を支援しています。
「酸素が必要になったけれど自宅へ帰りたい」
「退院後に呼吸状態が悪くなったときが心配」
「家族だけで酸素を管理できるか不安」
といった段階からでもご相談ください。
病院・主治医・ケアマネジャーなどと退院前から情報を共有し、ご本人とご家族が安心して在宅療養を始められるよう支援します。
在宅酸素療法を行いながらでも、その方らしい生活を続けられるよう一緒に考えていきます。
執筆者:宮本 真一郎
看護師。救急・急性期・手術室・離島医療を経験後、訪問看護に約8年間従事。癌末期・難病・医療依存度の高い方への訪問看護、在宅看取り、ご家族への支援に携わる。ROKU訪問看護ステーション代表。







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