PCAポンプをつけたまま退院|がん末期の痛みを自宅で管理するための訪問看護
- 宮本 真一郎
- 3 日前
- 読了時間: 9分
更新日:2 日前

「PCAポンプを使っているけれど、自宅へ退院できるのだろうか」
「医療用麻薬を持続的に使用している状態で、家族だけで対応できるのか不安」
「夜中に痛みが強くなった時はどうすればいい?」
がんの治療中や終末期には、痛みを和らげるために医療用麻薬を使用することがあります。
その中でも、痛みを継続的にコントロールするために使用されることがあるのがPCAポンプです。
PCAポンプを使用しているからといって、必ずしも入院を続けなければならないわけではありません。
ご本人の状態や痛みの程度、使用する機器、主治医・訪問診療・薬局・訪問看護などの支援体制を整えることで、PCAポンプを使用しながら自宅で療養できる場合があります。
大切なのは、医療処置があることだけを理由に「自宅では難しい」と決めてしまうのではなく、
どのような支援があれば自宅で過ごせるのかを、退院前から考えていくことです。
PCAポンプとは?
PCAとは「Patient Controlled Analgesia」の略で、日本語では患者自己調節鎮痛法と呼ばれます。
痛みを抑える薬をポンプから持続的に投与しながら、機器や設定によっては、痛みが強くなった時に医師があらかじめ設定した範囲内で追加投与できる仕組みがあります。
がんによる痛みでは、
痛みが一日を通して続いている
急に強い痛みが出ることがある
飲み薬を飲むことが難しくなってきた
吐き気や嚥下状態などのため内服が難しい
より安定した疼痛コントロールが必要
といった場合に、持続皮下注射や持続静脈注射などによる疼痛管理が検討されることがあります。
どの薬剤をどれくらい使用するのか、持続量や追加投与量をどのように設定するのかは、主治医が患者さんの状態を確認しながら判断します。
PCAポンプをつけたまま自宅へ退院できる?
状態によって異なりますが、PCAポンプを使用したまま自宅へ退院できる場合があります。
特にがん末期・終末期では、
「できるだけ自宅で過ごしたい」
「家族と一緒に過ごしたい」
「最期まで住み慣れた場所で過ごしたい」
と希望される方もおられます。
その希望を実現するためには、PCAポンプそのものだけではなく、退院後の医療体制全体を整えておくことが重要です。
たとえば、
在宅で診療する主治医
訪問看護
薬剤を供給・管理する薬局
病院の退院支援担当者
ケアマネジャー
ご家族
などが情報を共有し、役割を確認しておきます。
PCAポンプを管理できるかどうかだけではなく、「自宅で安心して療養を続けられる体制があるか」という視点が大切です。
訪問看護ではPCAポンプの何を見るの?
PCAポンプを使用している方への訪問看護では、単に機械が正常に動いているかを見るだけではありません。
まず大切なのは、その方自身の状態を見ることです。
訪問時には、主治医の指示や患者さんの状態に応じて、
痛みの強さや痛む場所
痛みが強くなる時間帯
追加投与の使用状況
眠気や意識状態
呼吸状態
吐き気・嘔吐
便秘
食事や水分摂取の状態
せん妄や落ち着かなさ
睡眠状況
PCAポンプの作動状況
薬液の残量
ルートや接続部分
皮下注射部位や点滴ルートの状態
発赤、腫れ、痛み、薬液漏れの有無
などを確認します。
そして、痛みの程度や薬の使用状況、体調の変化を主治医と共有し、必要な調整につなげていきます。
PCAポンプを見るのではなく、そのポンプを使いながら生活している「人」を見る。
これは在宅での訪問看護において、とても大切な視点だと私たちは考えています。
痛みは「0にすること」だけが目標ではありません
がんの痛みの感じ方は人によって異なります。
「少し痛みはあるけれど家族と話をしていたい」
「多少眠気があっても、とにかく痛みを減らしたい」
「昼間はできるだけ起きて過ごしたい」
など、ご本人によって大切にしたいことは違います。
そのため、痛みの数字だけを見るのではなく、
ご本人がどのように過ごしたいのか
を確認しながら支援していくことが重要です。
痛みや苦痛をできるだけ軽減しながら、その方らしい時間を自宅で過ごせるようにすることも、訪問看護の大切な役割です。
PCAポンプのアラームが鳴ったら?
PCAポンプには、機器や使用状況によってアラームが鳴ることがあります。
たとえば、
ルートが折れ曲がっている
接続部分に問題がある
薬液が少なくなっている
バッテリーや電源に問題がある
ポンプが正常に作動していない
など、さまざまな原因が考えられます。
使用する機種によって確認方法や対応方法は異なります。
そのため退院前に、
「どのような時にアラームが鳴るのか」「鳴った時はどこへ連絡するのか」
を確認しておくことが大切です。
また、ご家族だけの判断で薬の投与量や機器の設定を変更することは避け、主治医や訪問看護師など、あらかじめ決められた連絡先へ相談してください。
痛みが急に強くなった時は?
PCAポンプを使用していても、病状の変化などによって痛みが強くなることがあります。
また、
いつもより強い痛みが続く
急に痛みの場所が変わった
追加投与を行っても痛みが十分に改善しない
強い眠気がある
呼びかけへの反応が普段と違う
呼吸状態に変化がある
ルートが抜けた、外れた
薬液が漏れているように見える
ポンプが正常に動いていないように見える
といった場合には、ご本人やご家族だけで判断せず、主治医や訪問看護へ相談することが重要です。
がん末期・終末期では、短期間で状態が変化することもあります。
だからこそ、何か起きてから連絡先を探すのではなく、退院前から「どんな時に、誰へ連絡するのか」を決めておくことが大切です。
夜中に痛みが強くなったらどうする?
自宅療養でご本人やご家族が特に不安に感じやすいのが、夜間や休日です。
「夜中に急に痛みが強くなったらどうしよう」
「ポンプのアラームが鳴ったら誰に聞けばいい?」
「いつもより眠っているけれど、このまま様子を見てもいい?」
こうした判断をご家族だけに任せてしまうと、大きな負担になります。
PCAポンプを使用しながら自宅療養を行う場合は、夜間・休日を含めた連絡体制についても退院前に確認しておくことが重要です。
ROKU訪問看護ステーションでは、24時間365日、緊急時の相談や状態変化に対応できる体制を整えています。
普段から状態を確認している看護師が関わることで、夜間や休日に変化があった場合にも、
「今起きていること」
「どのような対応が必要なのか」
を一緒に整理しながら、必要に応じて主治医とも連携します。
退院前カンファレンスが重要です
PCAポンプを使用しながら自宅へ退院する場合、できれば退院前から訪問看護を含めた在宅チームで情報を共有しておくことが重要です。
退院前には、
現在の痛みの状態
使用している薬剤
PCAポンプの機種
投与経路
現在の設定内容
追加投与の方法
薬剤の交換や供給方法
訪問診療の開始時期
訪問看護の開始日
退院当日の訪問の必要性
夜間・休日の連絡方法
急変時の対応方針
ご本人が希望する療養場所
ご家族が不安に感じていること
などを共有しておくことで、退院後の生活を始めやすくなります。
ROKU訪問看護ステーションでは、退院前カンファレンスの段階からご相談いただくことも可能です。
退院日が決まってからではなく、
「PCAポンプを使用しているけれど、自宅へ帰れる可能性はあるだろうか」
という段階から関係者で相談することで、必要な準備を進めやすくなります。
ご家族だけでPCAポンプを管理するわけではありません
「家に帰ったら、家族が全部管理しないといけないのでは?」
と心配されるご家族もおられます。
しかし在宅療養は、ご家族だけで医療を抱えるためのものではありません。
主治医、訪問診療、訪問看護、薬局、ケアマネジャーなどが役割を分担しながら支えていきます。
もちろん、ご家族にお願いすることが必要な場合もあります。
一方で、医療者が行うべきことまでご家族に任せるのではなく、
「ご家族にできること」「医療者に連絡すること」「無理をして対応しなくてよいこと」
をあらかじめ整理しておくことが大切です。
ご家族が安心して一緒に過ごせることも、在宅療養ではとても重要です。
「PCAポンプがあるから自宅は難しい」と最初から決めない
医療用麻薬を使用している。
PCAポンプが必要。
病状が進行している。
こうした状況を聞くと、
「もう自宅へ帰ることは難しいのではないか」
と思われるかもしれません。
もちろん、すべての方が自宅療養できるわけではなく、病状や生活環境によっては入院での治療が必要な場合もあります。
それでも私たちは、
医療処置が必要だからという理由だけで、自宅で過ごすという選択肢を最初からなくしてしまう必要はない
と考えています。
大切なのは、ご本人がどこで、誰と、どのように過ごしたいのか。
そして、その希望を実現するために何が必要なのかを考えることです。
大阪市浪速区・大国町周辺でPCAポンプを使用した在宅療養をご検討の方へ
ROKU訪問看護ステーションでは、大阪市浪速区・大国町を中心に、がん末期・終末期の方や医療依存度の高い方への訪問看護を行っています。
医療用麻薬やPCAポンプを使用されている方についても、主治医・訪問診療・薬局・病院の地域連携室・ケアマネジャーなどと連携しながら、在宅療養を支援します。
また、24時間365日の対応体制を整え、夜間や休日の状態変化にも備えています。
「PCAポンプを使用しているけれど自宅へ退院したい」
「最期までできるだけ自宅で過ごしたい」
「家族だけで対応できるか不安」
「退院先の訪問看護ステーションを探している」
「まだ退院日は決まっていないが、在宅療養が可能か相談したい」
そのような段階からでもご相談ください。
私たちROKU訪問看護ステーションが大切にしているのは、
「自分の大切な家族もROKUで看たい」と思える看護。
病気や医療処置だけを見るのではなく、ご本人とご家族が大切にしたい生活を考えながら支援します。
医療処置が必要になっても。
病状が進行しても。
「自宅で過ごしたい」という想いを、簡単にあきらめない。
そのために必要な医療と生活の支援を、関係する医療・介護職の皆さまと一緒に考えていきます。
※PCAポンプの使用方法、薬剤、投与量、追加投与、緊急時の対応などは、患者さんの状態や使用する機器によって異なります。必ず主治医や担当する医療機関、訪問看護師等から個別に説明を受けてください。
執筆者:宮本 真一郎
看護師。救急・急性期・手術室・離島医療を経験後、訪問看護に約8年間従事。がん末期・難病・医療依存度の高い方への訪問看護、在宅看取り、ご家族への支援に携わる。ROKU訪問看護ステーション代表。







コメント