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腹膜透析をしながら自宅で生活するために|訪問看護による管理と退院支援

宮本 真一郎
18 時間前
読了時間: 13分

腹膜透析を始めることになったとき、

「透析をしながら本当に自宅で生活できるの?」

「自分で管理できなくなったらどうする?」

「家族が毎日手伝わないといけない?」

「お腹が痛くなったり、透析液が濁ったらどうしたらいい?」

「高齢になっても腹膜透析を続けられる?」


こうした不安を感じるご本人やご家族は少なくありません。


腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysis)は、自宅で行うことができる腎代替療法です。

病院へ週3回通って行う血液透析とは異なり、自宅で治療を行えるため、生活の時間を自分で組み立てやすいという特徴があります。


一方で、自宅で治療を行うからこそ、透析液の交換、出口部の管理、体重・血圧・むくみの確認、感染予防など、日常生活の中で継続した管理が必要になります。

日本透析医学会の「腹膜透析ガイドライン2019」でも、腹膜炎、カテーテル・出口部管理、栄養管理などが腹膜透析を継続するうえで重要な領域としてまとめられています。


だからこそROKUが腹膜透析の方を支援するときに大切にしたいのは、

「透析をきちんとできているか」だけを見ることではありません。

透析を続けながら、その人が、

自宅でどう暮らしたいのか。何を自分で続けたいのか。家族はどこまでなら支えられるのか。

そこまで考えることが、在宅で腹膜透析を支える訪問看護の役割だと考えています。



腹膜透析とは?


腹膜透析は、お腹の中にある「腹膜」を利用して、体内にたまった余分な水分や老廃物を取り除く治療です。

腹部に留置したカテーテルから透析液を腹腔内へ入れ、一定時間置いた後に排液します。


大きく分けると、ご本人や介助者が日中に透析液を交換する**CAPD(持続携行式腹膜透析)と、主に夜間の睡眠中に機械を使用して自動的に透析液を交換するAPD(自動腹膜透析)**があります。


どちらを選択するか、交換回数や透析液量をどうするかなどは、腎機能、残存腎機能、生活スタイル、身体状態などを踏まえて透析医療機関が判断します。

自宅で治療できるという自由度がある一方、毎日の生活そのものの中に透析が入ってくる治療でもあります。


訪問看護では「透析」だけでなく身体全体を見ます


腹膜透析をしている方への訪問看護では、カテーテルや透析液だけを確認するわけではありません。

血圧、体温、体重、むくみ、呼吸状態、食事、水分摂取量、尿量、排泄状況、活動量、睡眠なども含めて確認します。


腹膜透析では、体内から適切に水分が除去できているかという視点が重要です。

たとえば、

昨日より体重が増えている。

足のむくみが強くなっている。

血圧が変化している。

息切れが出てきた。

尿量が減ってきた。

いつもより排液量が少ない。


こうした変化を一つだけで判断するのではなく、いくつかの情報を組み合わせて「いつもの状態と違わないか」を考えます。


現在の在宅腹膜透析では、注液量、排液量、除水量、体重、血圧、体温などを継続的に確認することが重要な情報として扱われています。


ROKUの「対応できる疾患・状態」ページでも、腹膜透析の方について、体調変化、発熱、腹痛、むくみ、体重変化、出口部、清潔操作、ご家族の介助負担などを確認することを明記しています。



腹膜炎を早く見つけることがとても重要です


腹膜透析で特に注意したい合併症の一つが腹膜炎です。

国際腹膜透析学会(ISPD)のガイドラインでは、腹痛や透析排液の混濁などは腹膜炎を疑う重要な所見とされています。

特に排液が濁っている場合には、腹膜炎の可能性を考え、速やかに評価することが推奨されています。


訪問看護では、

「いつもと排液の色が違わないか」

「濁っていないか」

「腹痛がないか」

「発熱や全身状態の変化がないか」

などを確認します。


ただし、ご本人やご家族が排液の状態だけで腹膜炎かどうかを判断する必要はありません。

「何かいつもと違う」

と思った段階で、医療機関や訪問看護師へ相談することが大切です。


排液の濁りや腹痛など腹膜炎が疑われる症状がある場合には、自己判断で様子を見続けず、透析を管理している医療機関へ速やかに連絡します。


カテーテルの「出口部」も毎日の重要な観察ポイント


腹膜透析では、腹部からPDカテーテルが身体の外へ出ています。

この皮膚との境目を「出口部」といいます。


出口部に感染が起こると、そこから感染が広がり、腹膜炎につながる場合があります。

ISPDの2023年ガイドラインでも、出口部感染やカテーテルトンネル感染は、カテーテル喪失や腹膜炎につながる重要な合併症とされています。

特に膿性の排液、発赤、腫脹、圧痛などの変化について継続的な観察が必要です。


訪問看護では、

出口部がいつもと違わないか。

赤みが広がっていないか。

痛みがないか。

浸出液や膿が出ていないか。

カテーテルが強く引っ張られていないか。

などを確認します。


重要なのは、「正常なときの出口部」を知っておくことです。

普段の状態を知っているからこそ、小さな変化にも気づきやすくなります。


自分で腹膜透析ができなくなったら、もう続けられない?


高齢になると、

手先が動かしにくくなった。

視力が低下した。

物忘れが増えた。

立って作業することが難しくなった。

手順を一人で行うことに不安が出てきた。

といった変化が起こることがあります。


そのときに、

「自分でできなくなった=腹膜透析をやめなければならない」

とは限りません。


本人だけでは管理が難しくなった腹膜透析を、ご家族や看護師などの支援を受けながら継続する方法を**アシステッドPD(介助腹膜透析)**と呼びます。


2026年に発表された日本の研究でも、高齢化に伴い家族や訪問看護師によるアシステッドPDの需要が高まることが予想されており、病院看護師と訪問看護師が継続的に連携することの重要性が指摘されています。J-STAGE


ROKUでも、ご本人ができること、家族ができること、訪問看護が担えることを最初から固定して考えるのではなく、

「どうすればこの方が自宅で腹膜透析を続けられる可能性があるのか」

を医療機関、ご本人、ご家族、ケアマネジャーなどと一緒に考えることを大切にします。


なお、透析液交換そのものを含め、訪問看護が実施・介助できる具体的な範囲は、患者様の状態、治療方法、主治医・透析医療機関からの指示、訪問体制などによって異なります。


家族だけに腹膜透析を背負わせない


自宅で行う治療というと、

「家族が全部覚えなければならない」

「家族が毎日管理しないといけない」

と考えてしまうことがあります。


しかし、在宅療養は家族だけで医療を背負うことではありません。

腹膜透析を続けるための介助が家族の生活を圧迫してしまえば、長期的な在宅療養が難しくなることもあります。

訪問看護師が関わることで、手技だけでなく、ご家族が何に不安を感じているのか、どこに負担が集中しているのかを確認できます


さらに、訪問介護、福祉用具、通所サービスなどが必要であれば、ケアマネジャーと連携して生活全体を調整します。

ROKUには訪問看護だけでなくROKUケアプランセンターがあります。


「腹膜透析はできている。でも介護生活全体がしんどくなってきた」

という状況も含めて考えることができます。



腹膜透析をしているから、動かない方がいいわけではありません


腹膜透析を始めると、

「お腹にカテーテルがあるから、なるべく動かない方がいいのでは」

と不安になることがあります。

しかし、腹膜透析を行っている方にとっても、身体機能や日常生活動作を維持することは重要です。


ISPDとGlobal Renal Exercise Networkの身体活動・運動に関する推奨では、腹膜透析患者においても、その方の身体状態に合わせた運動や活動を取り入れることが勧められています。また、運動については腎臓内科医、看護師、リハビリ専門職などによる多職種での個別的な検討が重要とされています。


もちろん、腹膜透析をしている方なら誰でも同じ運動をすればいいということではありません。

カテーテルを挿入したばかりなのか。

透析液が入った状態なのか。

ヘルニアなどの問題がないか。

体力はどの程度か。

転倒リスクはないか。

こうしたことを考えながら活動を調整します。


ROKUのリハビリは「できることを生活の中に残す」ために行います


腹膜透析を継続できていても、長期間の入院や病気によって筋力や体力が低下すると、

トイレへ行けない。

入浴できない。

外出できない。

透析に必要な物品を自分で扱えない。

といった問題が起こることがあります。


治療だけが続けられても、生活そのものが続けられなければ、その人にとって十分な在宅療養とは言えません。

ROKUの理学療法士・作業療法士は、自宅の生活環境の中で、歩行、立ち上がり、トイレ、入浴など実際の生活動作を確認します。


必要であれば、看護師と療法士が腹膜透析の状態や体調を共有しながら、その日の活動量を考えます。


治療を続けるためだけに生活するのではなく、生活を続けるために治療を支える。

ROKUでは、その視点を大切にしています。



退院前に「誰が何をするか」を決めておく


腹膜透析を導入して自宅へ退院する場合、退院してから初めて支援体制を考えるのではなく、退院前から準備することが大切です。

特に確認しておきたいのは、透析液の交換や機器管理を誰が行うのか、出口部を誰が観察するのか、本人だけで難しい部分はどこなのか、ご家族が支援できる範囲はどこまでか、物品をどこに保管するのか、夜間の機器トラブル時にはどこへ連絡するのか、腹痛や排液の濁りが出た場合にどの医療機関へ連絡するのか、訪問看護やケアマネジャーがどこを担うのか、といった点です。


腹膜透析は病院で導入して終わる治療ではありません。

病院で覚えた方法を、実際の自宅環境で無理なく続けられるかを見る必要があります。


2026年のアシステッドPDに関する国内研究でも、訪問看護師は生活環境に即した継続的な支援を担い、病院看護師との双方向の連携が重要であることが指摘されています。J-STAGE


ROKUでは退院前からご相談いただけます。


夜間・休日の「何かあったらどうしよう」に備える


腹膜透析は毎日の生活の中で行う治療です。

当然、トラブルが平日日中だけに起こるとは限りません。

夜になって排液がおかしい。

腹痛が出てきた。

発熱した。

機器の扱いに困った。

出口部の様子がいつもと違う。


このようなとき、ご本人やご家族だけで「朝まで待っていいのか」を判断することは不安です。

だからこそ退院前から、透析医療機関・訪問看護・機器業者など、何が起きたときにどこへ連絡するのかを整理しておくことが重要です。

ROKU訪問看護ステーションでは24時間365日の対応体制を整えています。



腹膜透析を「管理する」だけではなく、その人の暮らしを見る


腹膜透析をしていると、

交換時間。

体重。

血圧。

除水量。

食事。

水分。

出口部。

感染予防。

毎日確認しなければならないことが増えます。


もちろん、その一つひとつは大切です。

でも、ROKUがそれだけを見ていたら、その人の生活が透析に埋もれてしまうと思っています。


本当に知りたいのは、

その人が家でどう過ごしたいのか。

自分で食事を作りたい。

近所へ買い物に行きたい。

お風呂に入りたい。

家族と普通に過ごしたい。

できるだけ自分で透析を続けたい。

家族に負担をかけすぎたくない。


人によって大切にしていることは違います。

だから、できなくなったことがあったときに、

「もう無理ですね」で終わるのではなく、「どうすれば続けられるか」を考える。


これはROKUのVALUEである「本人の想いを中心にする」「あきらめる前に考える」という

ことにも繋がっています。



病院・透析医療機関・MSWの方へ


腹膜透析を継続したまま自宅へ退院される方について、

「一人では交換管理が難しくなってきた」

「高齢で退院後の自己管理が心配」

「家族だけで支えられるか不安」

「腹膜透析に対応できる訪問看護を探している」

「リハビリも必要」

「ケアマネジャーがまだ決まっていない」

というケースもご相談ください。


ROKUでは腹膜透析だけを見るのではなく、退院後にその方が実際に生活できる体制をどう作るかを一緒に考えます。

透析医療機関・主治医との情報共有を行い、訪問看護、リハビリ、ケアマネジメントなど必要な支援を組み合わせます。


訪問診療先やケアマネジャーがまだ決まっていない段階についてもご相談いただけます。

腹膜透析は訪問看護の中でも専門的な支援が求められる領域であり、対応できる訪問看護ステーションが限られ病院と訪問看護との継続的な連携が重要です。


「腹膜透析があるから、自宅退院は難しい」と決める前にご相談ください。



腹膜透析を続けながら、自宅で暮らすことをあきらめない


腹膜透析は、自宅で行える治療だからこそ、その人の暮らしに近い医療です。

一方で、年齢を重ねたり、身体機能が低下したり、家族の状況が変わったりすれば、それまで一人でできていたことが難しくなることもあります。


そのときに、

「自分でできなくなったから、自宅では無理」とすぐに決めるのではなく、


本人ができること。

家族が無理なくできること。

訪問看護が支援できること。

リハビリで維持できること。

ケアマネジャーが調整できること。

透析医療機関と連携して考えられること。

それぞれを組み合わせて、もう一度考える。


ROKU訪問看護ステーションが大切にしているのは、

「自分の大切な家族なら、どうしてほしいか」

という視点です。


透析が必要になっても。

一人で管理することが難しくなっても。

家族だけでは不安になっても。


「自宅で過ごしたい」という想いを、簡単にあきらめない。


そのために必要な看護・リハビリ・介護の形を、地域の医療機関と一緒に考えていきます。



医療上のご注意

腹膜透析の透析液の種類・注液量・交換回数・APD設定・出口部ケア・透析液交換方法などは、患者様の病状や残存腎機能、治療方法によって異なります。

自己判断で変更せず、必ず透析を管理している医師・医療機関の指示に従ってください。


訪問看護が実施する透析液交換や機器操作など具体的な支援内容についても、主治医の指示、透析医療機関との連携内容、ご本人の状態、訪問体制によって異なります。

排液の濁り、腹痛など腹膜炎が疑われる症状や、出口部からの膿性排液などがある場合には、自己判断で経過をみず、透析医療機関へ速やかにご相談ください。


参考文献・参考資料


  1. 日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン2019」 日本透析医学会

  2. Li PK, et al. ISPD peritonitis guideline recommendations: 2022 update on prevention and treatment. Peritoneal Dialysis International. Sage Journals

  3. Chow KM, et al. ISPD Catheter-related Infection Recommendations: 2023 Update. Peritoneal Dialysis International. Sage Journals

  4. Bennett PN, et al. Physical activity and exercise in peritoneal dialysis: ISPD and Global Renal Exercise Network practice recommendations. Peritoneal Dialysis International. Sage Journals

  5. 平栗智美ほか「アシステッド腹膜透析患者支援において看護師が感じる困難と対処に関する質的研究―訪問看護師と病院看護師の比較から―」日本慢性看護学会誌、2026.


この記事を書いた人


宮本真一郎ROKU訪問看護ステーション/看護師

病院での救急・急性期看護、手術室、離島医療などを経験した後、訪問看護へ。

現在は大阪市浪速区・大国町を拠点に、医療依存度の高い方を含めた在宅療養を支えています。

「自宅で過ごしたい想いを、あきらめない。」「自分の大切な家族もROKUで看たいと思える看護」

を大切に、利用者さんとご家族が安心して自宅で過ごせる訪問看護を目指しています。

 
 
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