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痰の吸引が必要でも自宅へ退院できる?|在宅での喀痰吸引と訪問看護の役割

  • 宮本 真一郎
  • 2 日前
  • 読了時間: 11分

「痰の吸引が必要になったけれど、自宅へ退院できるのだろうか」

「病院では看護師さんが吸引してくれているけれど、家に帰ったらどうすればいい?」

「夜中に痰が増えて苦しくなったらどうしよう」

「気管切開や人工呼吸器があっても、自宅で生活できる?」

入院中に痰の吸引が必要になった方や、そのご家族から、このような不安を聞くことがあります。

吸引が必要な状態になると、「病院でなければ生活できないのではないか」と思われるかもしれません。

しかし、吸引が必要だからという理由だけで、自宅療養をあきらめる必要はありません。

ご本人の病状、痰の量や性状、吸引が必要になる頻度、呼吸状態、ご家族の状況などを確認し、主治医、病院、訪問診療、訪問看護、ケアマネジャーなどが連携して支援体制を整えることで、自宅で生活できる場合があります。

大切なのは、

「吸引が必要だから自宅は無理」

と最初から決めるのではなく、

「どうすれば自宅で安全に過ごせるのか」

を退院前から考えていくことです。


喀痰吸引とは?


喀痰吸引とは、自分の力だけでは十分に出すことができない痰や分泌物を、吸引器と吸引カテーテルなどを使って取り除く処置です。

健康な方であれば、痰が出ても咳をすることで体外へ排出できます。

しかし、病気の進行や筋力低下、意識状態の変化、嚥下機能の低下、気管切開などによって咳をする力が弱くなると、痰を十分に排出できなくなることがあります。

痰がたまると、ゴロゴロとした呼吸音が聞こえたり、呼吸が苦しくなったり、酸素飽和度が低下したりすることがあります。

そのような場合に、状態を確認しながら必要に応じて吸引を行います。


どこから吸引するの?


在宅療養で行われる吸引には、状態によっていくつかの方法があります。

口の中にたまった唾液や痰を吸引する場合、鼻からカテーテルを入れて鼻腔や咽頭付近の分泌物を吸引する場合、気管切開をしている方では気管カニューレから気管内の痰を吸引する場合などがあります。

どの方法が必要なのかは、その方の病状や気道の状態によって異なります。

特に気管内吸引は身体への負担を伴う医療処置です。

単に「時間が来たから吸引する」のではなく、痰の貯留、呼吸音、呼吸のしづらさ、咳の状態、酸素飽和度などを確認しながら、吸引が必要かどうかを判断することが大切です。


どのような方に吸引が必要になる?


吸引が必要になる理由はさまざまです。

例えば、ALSなどの神経・筋疾患、脳卒中後の嚥下障害、重度の身体障がい、気管切開をしている方、人工呼吸器を使用している方などでは、痰を自力で十分に排出することが難しくなる場合があります。

また、病気が進行して全身状態が低下した方や、終末期の療養中に分泌物が増えてくる方などでも、状態に応じて吸引が必要になることがあります。

吸引そのものだけを見るのではなく、

なぜ痰が増えているのか。

咳をする力はどうか。

飲み込みはどうか。

呼吸状態は変化していないか。

肺炎などの感染を疑う変化はないか。

といった全身状態を一緒に確認していくことが重要です。


吸引が必要でも自宅へ退院できます


入院中に1日に何度も吸引をしていると、ご家族から、

「こんな状態で本当に家へ帰れるのでしょうか」

と相談されることがあります。

自宅療養が可能かどうかは、吸引があるかないかだけでは決まりません。

退院後にどれくらいの頻度で吸引が必要と考えられるのか、ご本人が自分で吸引できるのか、ご家族が対応できるのか、訪問看護をどのように利用するのか、夜間や休日に状態が変化した場合に誰へ相談するのか。

こうしたことを退院前に整理しておくことが重要です。

ROKU訪問看護ステーションでは、退院後に医療処置が必要な方について、退院前から病院と情報共有し、在宅療養を始めるための準備を行っています。



訪問看護では吸引だけをするわけではありません


吸引が必要な方への訪問看護では、吸引という処置だけを見るのではなく、呼吸状態や生活全体を確認します。

訪問時には主治医の指示やご本人の状態に合わせて、次のような支援を行います。

  • 痰の量・色・粘り・においなどの確認

  • 呼吸状態、呼吸音、SpO2などの観察

  • 必要に応じた口腔・鼻腔・気管からの吸引

  • 気管切開部や気管カニューレ周囲の観察・ケア

  • 人工呼吸器や在宅酸素などの使用状況の確認

  • 発熱や呼吸状態の悪化など感染を疑う変化の確認

  • 体位調整や排痰を促すための支援

  • ご本人・ご家族への吸引方法や療養生活についての説明

  • 主治医や訪問診療医、ケアマネジャーなどとの情報共有

  • 夜間・休日を含めた緊急時の相談対応


吸引回数が急に増えた。

痰の色が変わった。

いつもより痰が粘っている。

発熱している。

酸素飽和度が低くなった。

呼吸が苦しそう。

こうした変化には、肺炎や呼吸状態の悪化などが隠れていることもあります。

訪問看護では、単に痰を吸引して終わるのではなく、その背景にある身体の変化を確認し、必要に応じて主治医へ報告します。


気管切開をしている方では特に重要です


気管切開をしている方では、気管カニューレを通して呼吸しているため、痰の管理が非常に重要になります。

痰が増えたり、粘りが強くなったりすると、気管カニューレ内に痰がたまり、呼吸しづらくなることがあります。

そのため、気管切開部の皮膚状態、痰の状態、呼吸音、カニューレの状態などを確認しながら必要なケアを行います。

気管切開があり、自宅での吸引やカニューレ管理について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。



人工呼吸器を使用している方の吸引


気管切開下で人工呼吸器を使用している方などでは、吸引が日常的に必要になる場合があります。

人工呼吸器を使用している場合は、痰だけではなく、呼吸器の作動状況、回路、アラーム、酸素飽和度、呼吸状態なども一緒に確認する必要があります。

吸引中は一時的に呼吸状態へ影響することもあるため、その方に合った方法を主治医や医療機関と共有しておくことが重要です。



ALSなどの難病でも自宅療養を支えます


ALSをはじめとした神経・筋疾患では、病気の進行に伴って咳をする力が弱くなり、自分で痰を十分に出せなくなることがあります。

また、嚥下機能の低下により唾液や分泌物がたまりやすくなる場合もあります。

こうした方では、吸引だけではなく、呼吸状態、嚥下、栄養、コミュニケーション、人工呼吸器、生活動作、ご家族の介護負担などを総合的に考える必要があります。

ROKUでは、ALSやパーキンソン病など、難病・重度障がいのある方の在宅療養についてもご相談を受けています。



家族も吸引をすることはできますか?


病状や療養環境によっては、ご家族が吸引を行いながら自宅で生活されているケースもあります。

ただし、「家族だから自己流で行ってよい」というものではありません。

どのような時に吸引するのか、どこまでカテーテルを入れるのか、どのような変化があれば吸引を中止するのか、吸引器や物品をどう管理するのかなど、その方の状態に合わせた説明を受ける必要があります。

退院前に病院で練習を行い、退院後は訪問看護師と一緒に確認していくこともあります。

また、ご家族が吸引できるようになったからといって、すべてを家族だけで担わなければならないわけではありません。

介護するご家族が疲れてしまえば、自宅療養そのものを続けることが難しくなってしまいます。

「誰が、いつ、どこまで行うのか」

を考え、医療・介護サービスを組み合わせることが大切です。


ヘルパーは吸引できますか?


一定の研修を修了するなど、法律で定められた要件を満たした介護職員等が、登録された事業所において医師や看護師などと連携しながら喀痰吸引等を実施できる制度があります。

ただし、すべてのヘルパーやすべての訪問介護事業所が吸引に対応できるわけではありません。

退院後に訪問介護による吸引も必要になる可能性がある場合は、病院、ケアマネジャー、訪問看護、訪問介護事業所などで早めに相談しておくことが重要です。


夜中に痰が増えたらどうする?


在宅療養でご家族が特に不安に感じるのが夜間です。

「夜中にゴロゴロいい始めた」

「何度吸引しても痰が出てくる」

「急に呼吸が苦しそうになった」

「吸引しても酸素飽和度が戻らない」

このようなことが起こる可能性もあります。

そのため、吸引が必要な方が自宅へ退院する場合は、夜間や休日に状態が変化した時の連絡先をあらかじめ決めておくことが重要です。

ROKU訪問看護ステーションでは、24時間365日の対応体制を整え、夜間や休日の状態変化にも備えています。

普段の状態を知っている訪問看護師が相談を受け、必要に応じて主治医などと連携しながら対応を判断します。



退院前から訪問看護へ相談してください


吸引が必要な状態で自宅へ退院する場合、退院日の直前になってから準備を始めるのではなく、できるだけ早い段階から在宅チームへ相談することをおすすめします。

退院前には、なぜ吸引が必要なのか、どの程度の頻度で吸引しているのか、どの部位から吸引しているのか、気管切開や人工呼吸器の有無、酸素療法の有無、必要な吸引器や物品、ご家族がどこまで対応できるのか、訪問看護の開始日や訪問頻度、夜間・休日の連絡方法などを確認しておきます。

病院で行っているケアと、自宅で実際にできることには違いがあります。

だからこそ、退院前カンファレンスなどを通して、

「病院ではどのような状態なのか」

「自宅では誰が支えるのか」

を事前に共有することが重要です。

ROKU訪問看護ステーションでは、退院前カンファレンスの段階からご相談いただけます。



吸引が必要だからと、自宅で過ごすことをあきらめない


吸引が必要。

気管切開をしている。

人工呼吸器を使用している。

難病が進行している。

こうした状態になると、

「もう自宅では無理なのではないか」

と思われることがあります。

もちろん、病状によっては入院治療が必要な場合もあります。

しかし、医療処置が必要になったという理由だけで、ご本人の「家に帰りたい」「自宅で過ごしたい」という希望を最初からなくしてしまう必要はないと、私たちは考えています。

ROKU訪問看護ステーションが大切にしているのは、

「自分の大切な家族もROKUで看たい」と思える看護です。

吸引という医療処置だけを見るのではなく、ご本人がどこで、誰と、どのように暮らしたいのか。

ご家族は何を不安に感じているのか。

その希望を実現するためには、どのような医療と介護が必要なのか。

一緒に考えていきます。

自宅で過ごしたい想いを、あきらめない。

それがROKU訪問看護ステーションの在宅療養支援です。


大阪市浪速区・大国町周辺で吸引が必要な方の訪問看護をお探しの方へ


ROKU訪問看護ステーションでは、大阪市浪速区・大国町を中心に、吸引が必要な方、気管切開をしている方、人工呼吸器を使用している方、ALSなどの難病がある方など、医療依存度の高い方の在宅療養を支援しています。

「吸引が必要な状態で退院する予定」

「家族だけで吸引を続けられるか不安」

「気管切開や人工呼吸器にも対応できる訪問看護を探している」

「夜間にも吸引が必要になる可能性がある」

「まだ退院日は決まっていないけれど、自宅へ帰れるか相談したい」

そのような段階からでもご相談ください。


病院の地域連携室、退院支援担当者、主治医、ケアマネジャーなど関係する皆さまと連携しながら、ご本人とご家族が自宅で過ごすために必要な体制を一緒に考えていきます。


※吸引方法、吸引圧、カテーテルの種類・挿入範囲、吸引時間、実施頻度、酸素療法や人工呼吸器使用中の対応などは、ご本人の病状や使用している医療機器によって異なります。必ず主治医・医療機関・訪問看護師等から個別に説明を受け、その指示に従ってください。


よくあるご質問


〇 吸引が1日に何回も必要でも訪問看護を利用できますか?


利用について相談できます。

ただし、必要な吸引回数、時間帯、ご本人やご家族が対応できる範囲、利用できる保険制度、他のサービスの利用状況などによって支援体制は異なります。

退院前から訪問看護ステーションへご相談ください。


〇気管切開をしていても訪問看護を利用できますか?


利用できます。

ROKU訪問看護ステーションでは、主治医の指示のもと、気管切開部の観察やケア、喀痰吸引、呼吸状態の観察などについて対応しています。


〇人工呼吸器と吸引の両方が必要でも相談できますか?


ご相談いただけます。

人工呼吸器を使用している方では、吸引だけでなく呼吸状態や人工呼吸器の作動状況、回路、アラームなどを含めた管理が必要になります。

退院前に病院から情報を共有していただき、在宅療養に必要な体制を確認します。


〇退院日がまだ決まっていなくても相談できますか?


相談できます。

むしろ、吸引器や必要物品、訪問看護、訪問診療、介護サービスなどの調整が必要になる場合があるため、退院の可能性が出た段階からご相談いただくことで準備を進めやすくなります。


参考文献・参考資料

日本呼吸療法医学会「気管吸引ガイドライン2023[改訂第3版](成人で人工気道を有する患者のための)」

厚生労働省「喀痰吸引等制度について」「喀痰吸引等研修」

日本呼吸器学会・日本呼吸器財団・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会ほか「呼吸不全に関する在宅ケア白書2024」

執筆者

宮本 真一郎

看護師。救急・急性期・手術室・離島医療を経験後、訪問看護に約8年間従事。がん末期・終末期、難病、気管切開、人工呼吸器など医療依存度の高い方への訪問看護、在宅看取り、ご家族への支援に携わる。ROKU訪問看護ステーション代表。

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