脳卒中(脳梗塞・脳出血)の訪問リハビリ|退院後に自宅で確認したい7つのポイント

「病院では歩けていたのに、自宅へ帰ると動きにくそうにしている」
「トイレまでの移動や、ベッドからの立ち上がりが心配」
「手足の麻痺は軽いと言われたけれど、薬の管理や家事が難しくなった」
「退院後もリハビリを続けた方がよいのだろうか」
脳梗塞や脳出血などの脳卒中で入院し、病院でリハビリを行った後も、自宅へ戻ると新たな困りごとが見つかることがあります。
病院の廊下やリハビリ室では歩けていても、自宅には狭い廊下、段差、家具、敷物、トイレでの方向転換など、その家特有の環境があります。
訪問リハビリの役割は、病院で行っていた訓練を自宅で繰り返すことだけではありません。
実際に生活する環境で、ご本人が困っている動作を確認し、
「自分でトイレへ行きたい」
「家族と食卓を囲みたい」
「もう一度買い物に行きたい」
など、ご本人が続けたい生活を一緒に考えることが大切です。
ROKU訪問看護ステーションでは、看護師と理学療法士・作業療法士が連携し、脳卒中後の体調管理、生活動作、転倒予防、高次脳機能障害、ご家族への介助支援などを行っています。
※本記事では、訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士が、主治医の訪問看護指示書に基づいて行うリハビリテーションを「訪問リハビリ」と表現しています。
脳卒中とは
脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで、脳の機能に障害が起こる病気の総称です。
大きく分けると、次の3つがあります。
脳の血管が詰まる「脳梗塞」
脳の血管が破れる「脳出血」
脳動脈瘤などが破裂する「くも膜下出血」
本記事では、在宅で訪問看護・訪問リハビリの相談を受けることが多い、脳梗塞・脳出血後の自宅生活を中心に解説します。
脳卒中後の困りごとは、手足の麻痺だけではありません
脳卒中後に現れる症状は、手足の麻痺だけではありません。
脳の損傷した場所や範囲によって、次のような症状がみられることがあります。
手足に力が入りにくい
身体の片側の感覚が分かりにくい
バランスを崩しやすい
言葉が出にくい
相手の話を理解しにくい
食事や水分でむせる
疲れやすくなった
集中が続かない
新しいことを覚えにくい
動作の手順や段取りが分からない
身体の片側や、片側にある物に気付きにくい
感情を抑えにくくなった
自分の症状を自覚しにくい
歩けるようになり、外見上は回復したように見えても、注意力、記憶、判断力、感情のコントロールなどに問題が残ることがあります。
そのため、脳卒中後の訪問リハビリでは、筋力や歩行能力だけでなく、生活動作、認知機能、服薬、食事、家族関係などを含めて確認することが重要です。
脳梗塞と脳出血でリハビリの内容は違いますか?
脳梗塞と脳出血では、病気が起こる仕組みや急性期の治療、再発予防の方法が異なります。
一方、退院後のリハビリでは、病名だけで内容を決めるのではありません。
どこに麻痺があるか
感覚障害があるか
座る・立つ・歩くことができるか
高次脳機能障害があるか
飲み込みや会話に問題があるか
血圧や全身状態が安定しているか
自宅でどのように過ごしたいか
ご家族がどの程度介助できるか
などを確認し、一人ひとりに合わせて支援内容を考えます。
脳梗塞だからこの運動、脳出血だからこの訓練と、病名だけで一律に決めるものではありません。
主治医の指示、退院時の情報、現在の体調を確認しながら、安全に進めることが大切です。
脳卒中の退院後に自宅で確認したい7つのポイント
1.ベッド・椅子・トイレへの移乗
退院後に最初に困りやすいのが、ベッドから起き上がる、椅子から立つ、車いすへ移る、トイレに座るといった動作です。
病院では、
ベッドの高さが調整されている
廊下やトイレに手すりがある
床が平らで物が少ない
看護師や療法士が近くにいる
など、動きやすい環境が整っています。
一方、自宅では、
ベッドが低すぎる
椅子が柔らかく沈み込む
つかまる場所がない
車いすを置くスペースが狭い
トイレ内で方向転換できない
麻痺側に壁や家具がある
といった問題が見つかることがあります。
訪問リハビリでは、実際に使用するベッド、椅子、車いす、トイレを確認しながら、安全な動作方法を考えます。
足を置く位置や身体の動かし方だけでなく、ベッドの高さ、手すり、家具の配置、福祉用具についても検討します。
2.歩行と転倒予防
脳卒中後は、筋力がある程度回復していても、感覚障害、注意障害、バランス低下、疲労などが原因で転倒することがあります。
特に注意したいのは、次のような場面です。
狭い廊下で方向転換する
玄関や浴室の段差を越える
夜間にトイレへ行く
急いで立ち上がる
敷物や電気コードをまたぐ
物を持ちながら歩く
会話をしながら移動する
麻痺側にある家具や壁へ近づく
訪問リハビリでは、「何メートル歩けるか」だけでなく、普段どの場所で、どのように歩いているかを確認します。
杖や歩行器を使用していても、身体や住環境に合っていなければ、十分に活用できない場合があります。
理学療法士が歩き方、バランス、方向転換、立ち上がりなどを確認し、必要に応じて福祉用具事業所やケアマネジャーと連携します。
3.麻痺した手と日常生活動作
脳卒中後のリハビリでは、麻痺した手を動かす練習だけでなく、日常生活の中でどのように使うかを考えることが重要です。
例えば、
着替える
歯を磨く
顔を洗う
食器を押さえる
ドアを開ける
スマートフォンを操作する
財布からお金を出す
洗濯物をたたむ
調理器具を使う
など、その方が実際に行いたい動作を確認します。
作業療法士は、手の動きだけでなく、姿勢、道具の形、置き場所、動作の手順なども含めて評価します。
麻痺した手だけで全てを行うことにこだわらず、反対側の手や自助具を使いながら、安全に生活できる方法を考えることも大切です。
また、麻痺した腕を無理に引っ張ると、肩の痛みや損傷につながることがあります。
ご家族にも、安全な支え方や着替えの介助方法をお伝えします。
4.高次脳機能障害への生活支援
脳卒中後には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが現れることがあります。
例えば、
薬を飲んだことを忘れる
火や電気を消し忘れる
複数の指示を聞くと混乱する
着替えや料理の順番が分からない
予定を立てて行動できない
会話中に話がそれてしまう
以前より怒りやすくなった
相手の気持ちを考えにくくなった
自分には問題がないと思っている
といった変化です。
これらは、単なる性格の変化や、本人の努力不足ではありません。
高次脳機能障害は、外見から分かりにくいため、ご本人とご家族の双方が「なぜ以前のようにできないのか」と悩むことがあります。
訪問リハビリでは、実際の生活環境で、
予定を一つずつ伝える
薬を置く場所を固定する
カレンダーやチェック表を使用する
動作の手順を写真や文字で示す
周囲の刺激を減らす
ご家族の声かけを統一する
できる作業と難しい作業を整理する
など、ご本人に合った方法を考えます。
本人に何度も注意するだけではなく、間違いが起こりにくい環境をつくることも大切です。
5.食事・飲み込み・コミュニケーション
脳卒中後は、飲み込みの機能が低下し、食事や水分でむせることがあります。
次のような変化がある場合は注意が必要です。
食事中にむせる
水分でせき込む
食後に声が濁る
食事に時間がかかる
口の中に食べ物が残る
痰が増えた
発熱を繰り返す
食事量や水分量が減った
体重が減ってきた
むせが少ないからといって、飲み込みに問題がないとは限りません。
訪問看護師は、食事量、水分量、体温、呼吸状態、痰、口腔内の状態などを確認します。
専門的な嚥下評価や訓練が必要な場合は、主治医や言語聴覚士、歯科医師などの関係機関と連携します。
また、失語症や構音障害によって、言葉が出にくい、ろれつが回りにくい、相手の話を理解しにくいこともあります。
急かしたり、本人に代わってすぐに答えたりせず、伝えやすい方法を一緒に探すことが重要です。
6.服薬・血圧・体調管理と再発予防
脳卒中後は、リハビリだけでなく、再発を防ぐための体調管理も重要です。
自宅では、次のような点を確認します。
処方薬を正しく飲めているか
飲み忘れや重複がないか
退院前の薬が残っていないか
血圧や脈拍に大きな変化がないか
立ち上がった時にふらつかないか
食事や水分を取れているか
通院を継続できているか
喫煙や飲酒を含む生活習慣を見直せているか
脳梗塞と脳出血では、使用する薬や再発予防の考え方が異なります。
また、血圧の目標値も、脳卒中の種類、血管の状態、年齢、持病などによって異なります。
自己判断で薬を中止したり、量を変更したりせず、主治医の指示に従う必要があります。
看護師は、自宅での血圧、服薬状況、食事量、ふらつきなどを確認し、気になる変化を主治医へ報告します。
7.ご家族の介助負担
退院直後は、ご家族が、
「自分たちで頑張らなければならない」
「入院中にできていたのだから、家でもできるはず」
と考え、必要以上に介助を抱え込んでしまうことがあります。
しかし、過剰に身体を持ち上げたり、麻痺した腕を引っ張ったりすると、ご本人とご家族の双方に負担がかかります。
訪問リハビリでは、実際の生活場面で、
どこを支えればよいか
どこまで本人に任せるか
転倒した時にどう対応するか
入浴やトイレをどう介助するか
麻痺した腕をどのように扱うか
福祉用具を使った方がよいか
を確認します。
介助方法だけで解決するのではなく、訪問介護、通所サービス、福祉用具、ショートステイなどを組み合わせ、ご家族が休める体制をつくることも重要です。
看護師・理学療法士・作業療法士の役割
看護師
血圧、脈拍、体温、呼吸状態の確認
服薬内容と服薬状況の確認
食事、水分、排泄、睡眠の確認
むせ、発熱、痰などの状態観察
褥瘡や皮膚トラブルの予防
再発を疑う症状の確認
主治医への報告と連携
ご本人・ご家族からの療養相談
理学療法士
寝返り、起き上がり、立ち上がり
ベッドや車いすへの移乗
歩行、方向転換、バランス
転倒予防
関節の動きや筋力への支援
杖、歩行器、車いすの確認
手すりや住環境の提案
ご家族への介助方法の説明
作業療法士
食事、更衣、排泄、入浴などの生活動作
麻痺した手の使用方法
高次脳機能障害への生活上の工夫
家事や外出の再開
趣味や本人の役割への支援
自助具や生活用品の提案
生活リズムの再構築
ご家族への声かけや関わり方の説明
ROKU訪問看護ステーションには、看護師と理学療法士・作業療法士が在籍しています。
歩行や筋力だけを見るのではなく、血圧、服薬、食事、排泄、認知機能、自宅環境、ご家族の負担などを共有しながら支援します。
看護師とリハビリ専門職が同じステーションにいることで、医療面と生活面の変化を日常的に共有できることがROKUの特徴です。
突然の症状は訪問日を待たず救急要請を
脳卒中を経験した方に、次のような症状が突然現れた場合は、次回の訪問看護を待たず、救急要請を検討してください。
顔の片側がゆがむ
片方の腕や足に力が入らない
急に言葉が出なくなる
ろれつが回らなくなる
話している内容を理解できない
急にふらつき、歩けなくなる
突然、経験したことのない強い頭痛が起こる
意識が悪くなる
けいれんが起こる
症状が一度軽くなった場合でも、脳卒中の可能性を否定できません。
脳卒中は突然発症することが多く、早く専門的な治療を受けることが重要です。
訪問リハビリはいつから相談すればよいですか?
次のような状況がある場合は、退院前または退院後早期からの相談をおすすめします。
病院では動けているが、自宅環境に不安がある
転倒した、または転倒しそうになった
トイレや入浴の介助が難しい
高次脳機能障害が疑われる
薬や血圧の管理に不安がある
食事中のむせや食事量低下がある
ご家族の介助負担が大きい
退院後、活動量が急に減った
外来リハビリへの通院が難しい
家事や外出を再開したい
一人暮らしを続けられるか確認したい
歩けなくなってからではなく、生活の中で少し困り始めた段階から相談することで、現在の能力を自宅生活に生かす方法を考えやすくなります。
よくあるご質問
脳梗塞でも脳出血でも訪問リハビリを利用できますか?
病名だけで利用の可否が決まるわけではありません。
現在の病状、主治医の指示、自宅での生活状況、必要な支援などを確認したうえで、利用を検討します。
発症から時間が経っていても利用できますか?
発症から時間が経過している場合でも、自宅での生活動作、転倒予防、介助方法、福祉用具、高次脳機能障害などについて相談できます。
目的は、症状を大きく改善することだけではありません。
現在できている動作を維持する、ご家族の介助負担を減らす、安全に外出できる環境を整えるといった目標もあります。
看護師とリハビリを一緒に利用できますか?
利用できます。
脳卒中後は、身体機能だけでなく、血圧、服薬、食事、排泄、皮膚状態なども確認する必要があります。
看護師と理学療法士・作業療法士が情報を共有することで、医療面と生活面の両方から支援できます。
高次脳機能障害があっても相談できますか?
ご相談いただけます。
記憶、注意、動作の手順、感情のコントロールなど、生活の中で起きている困りごとを確認し、ご本人に合った環境や関わり方を考えます。
飲み込みや言葉の問題にも対応できますか?
看護師や療法士が食事場面、むせ、会話の状況などを確認します。
専門的な嚥下・言語評価や訓練が必要な場合には、主治医や言語聴覚士などの関係機関との連携を検討します。
医療保険と介護保険のどちらを利用しますか?
年齢、要介護認定の有無、病状、主治医の指示、利用するサービスによって異なります。
個別の状況を確認したうえでご案内しますので、主治医、ケアマネジャー、訪問看護ステーションへご相談ください。
浪速区で脳卒中後の訪問看護・訪問リハビリをお探しの方へ
ROKU訪問看護ステーションでは、大阪市浪速区・大国町を中心に、脳梗塞・脳出血など、脳卒中後の在宅生活を支援しています。
看護師と理学療法士・作業療法士が連携し、
退院後の体調管理
服薬・血圧管理
歩行、移乗、転倒予防
更衣、排泄、入浴などの生活動作
高次脳機能障害への生活支援
麻痺した手の使い方
ご家族への介助指導
福祉用具や住環境の相談
主治医、病院、ケアマネジャーとの連携
などを行います。
「退院後、自宅で生活できるか分からない」
「看護師とリハビリの両方に来てほしい」
「病院でできていたことが、自宅ではできない」
「高次脳機能障害への対応方法が分からない」
という段階でもご相談ください。
ご本人が住み慣れた自宅で、どのような生活を続けたいのかを一緒に考えます。
【退院後すぐに訪問看護を利用するメリット】
執筆者:宮本 真一郎
看護師。救急・急性期・手術室・離島医療を経験後、訪問看護に約8年間従事。癌末期・難病・医療依存度の高い方への訪問看護、在宅看取り、ご家族への支援に携わる。ROKU訪問看護ステーション代表。






